ポリエステルを知る
ペットボトルと同じ原料からできている
ポリエステル繊維にはいくつか種類がありますが、日本化学繊維協会の解説によれば、もっとも生産量が多いのはPET(ポリエチレンテレフタレート)で、一般にポリエステルといえばこのPETを指します。そしてペットボトルの原料も同じPET樹脂です。この樹脂を高温で溶かし、小さな孔がたくさん開いた口金から押し出して空気中で冷やし、繊維にしたものがポリエステル繊維です。この作り方を溶融紡糸といいます。
同じ協会の解説では、ポリエステルは「比較的容易に製造できることや繊維性能のバランスが優れている」ことから、世界でもっとも多く生産されている化学繊維だと説明されています。安いから使われている、という以上の理由がある繊維です。
断面の形を変えられるのが、化学繊維のいちばんの強み
天然繊維は繊維の形を選べませんが、化学繊維は口金の孔の形を変えるだけで断面の形を変えられます。東京都クリーニング生活衛生同業組合の解説によれば、生地の風合いや触り心地は、繊維の細さ・断面・形状・重さ・撚り方で決まります。ポリエステルの基本の断面は絹に似た光沢を出す円形や丸みのある三角形ですが、星形や楕円形にしたり、繊維の中を空洞にした中空繊維にしてボリュームを出しながら軽くしたりもできます。冬のアウターの中綿に使われるポリエステルわたは、この中空構造で空気を抱えこんで暖かさを出しています。
速乾なのにベタつく、という一見おかしな話
同じ解説では、ポリエステルの短所として「吸水及び吸湿性がないので、発汗時にベタつきやすい」ことが挙げられています。乾くのが速いのと、汗を吸わないのは、同じ性質の裏表です。水分を繊維の中に取り込まないので表面から乾きやすく、その代わり、かいた汗は生地の表面や肌との間に残りやすくなります。
『人間生活文化研究』(2017年)に収録された研究でも、ポリエステルは汗が生地の表面に残りやすいこと、そして繊維と皮膚がこすれることでかゆみが起きやすいことが報告されています。同じ研究では、綿であっても硬い布は皮膚を刺激して不快感を与えると述べられています。素材の名前だけで肌当たりが決まるわけではなく、汗の残りやすさと摩擦、そして生地の硬さの組み合わせの話として見るのが実際に近いようです。感じ方には個人差があります。
静電気は「起きやすい側」に位置している
ポリエステルは、公開されている帯電列の資料でそろってマイナス側の端に置かれている繊維です。帯電列の上で離れた位置にある素材どうしがこすれるほど静電気は起きやすい傾向があるため、プラス側の端にあるウールやナイロンと重ねると、離れた組み合わせになります。冬にセーターの下へ着るインナーを選ぶときに、この関係が効いてきます。
毛玉は「できやすさ」より「取れにくさ」の話
毛玉について同組合は、生地表面が摩擦されると繊維が引き出され、これが絡み合うことで発生すると説明しています。肘や腰まわり、抱えた鞄が当たる部分に多いのはそのためです。ポリエステルについては毛玉ができやすく、しかも除去しにくい一面があるとされています。丈夫な繊維なので、いったんできた毛玉が脱落せずに残りやすいわけです。同組合は「毛玉ができないポリエステル」と言い切れる商品は現在なく、できにくいものは存在する、という書き方をしています。
綿との混紡でよく見る「65:35」
ポリエステルの短所である吸水性のなさは、吸水・吸湿性のある綿と混ぜることで補えます。同組合の解説では、その代表的な割合としてポリエステル65%・綿35%が挙げられ、一部では黄金比率と呼ばれていると紹介されています。作業服やユニフォームのタグでこの数字をよく見かけるのは、偶然ではありません。
向いている服・気をつけたい場面
乾きの速さと形の崩れにくさが効くスポーツウェア、アウター、速乾インナーは得意分野です。一方、乾燥した季節にウール系のニットと重ねる着方は、静電気の面では条件が厳しくなる組み合わせです。手持ちの重ね着がどうなるかは、チェッカーで確かめられます。