アクリルを知る
あったかインナーの組成表示に、たいてい入っている
冬物のニットや、機能性インナーの組成表示を見ると、アクリルの名前をよく見かけます。日本化学繊維協会の解説によれば、アクリル繊維は他の合成繊維と比べてもっとも羊毛に似ており、発色性・嵩高性・耐候性に優れています。ウールに代わる繊維として広がったという出自が、そのまま用途に表れている素材です。
ふくらませて空気を抱えこむ「バルキー糸」
では、どうやってウールに近づけているのでしょうか。東京都クリーニング生活衛生同業組合は、その鍵をバルキー糸(嵩高加工糸)だと説明しています。
しくみはこうです。熱で縮む繊維と、縮まない繊維を混ぜて糸にしておき、あとから熱処理をする。すると縮む側だけが縮み、縮まない側が糸の中で行き場を失ってふくらみます。結果として、糸の中にたくさんの空気を含んだ状態ができあがります。やわらかい風合いと保温性は、嵩が高く空気をたくさん含むことが条件の一つなので、この加工で見た目も風合いも保温性もウールに近づけられるわけです。
ウールが縮れ(クリンプ)で自然にやっていることを、人工的に作り出した——と言うと分かりやすいかもしれません。
ウールとの違いは、水まわりに出る
同組合はアクリルの短所として、吸水・吸湿性が劣っていて汗を吸わないため、汗をかくとベタつきやすいこと、毛玉ができやすいこと、静電気が起きやすいこと、熱に弱いことを挙げています。長所としては、ウールより価格が安いこと、保温性があり強度も高いこと、虫食いの影響を受けないこと、吸水・吸湿性が小さいので乾きが速いこと、鮮やかな染色ができることが挙げられています。
つまりウール100%とアクリル100%は、優劣というより性格の違いです。同組合も、価格だけでなくそれぞれの特性の違いによって選ぶことが大切だと書いています。
毛玉は摩擦の話
毛玉について同組合は、生地表面が摩擦されると繊維が引き出され、これが絡み合うことで発生すると説明しています。肘や腰まわり、抱えた鞄が当たる部分に多いのはそのためです。また、アクリルやウールなどで撚りの少ない糸を用いた、やわらかな風合いの製品は着用摩擦で毛玉が生じやすいとされています。ざっくりしたローゲージニットが毛玉になりやすいのは、素材だけでなく糸の作り方の問題でもあるわけです。
できてしまった毛玉は、指でつまみ取ると繊維がさらに引き出されるため、ハサミで切り取るか毛玉取り器を使うよう勧められています。ただし除去すれば生地は徐々に薄くなる、とも書かれています。
「アクリル」と「モダクリル」の分かれ目は85%
同協会によれば、アクリル繊維はアクリロニトリルを主成分とする合成繊維で、その含有量によってアクリル繊維とモダクリル繊維に分かれます。JIS規格では質量比でアクリロニトリル85%以上をアクリル繊維、35%以上85%未満をモダクリル繊維と定義しています。消費者庁の指定用語表でも、85%以上のものは「アクリル」、それ以外は「モダクリル」と表示することになっています。
モダクリル繊維は難燃性に優れるため、難燃カーテンや難燃毛布に使われ、人工毛髪やエコファーにも使われていると紹介されています。タグに見慣れない「モダクリル」の文字を見つけたら、そういう理由があると思ってください。
静電気では、ポリエステルと同じ側にいる
アクリルは公開されている帯電列の資料でそろってマイナス側の端に置かれています。プラス側の端にあるウールやナイロンと重ねると、帯電列の上では離れた組み合わせになります。アクリルのセーターの下に何を着るかで結果が変わるので、チェッカーで確かめてみてください。
向いている服・気をつけたい場面
セーター、毛布、小物といった、ふくらみと保温が効く用途が得意分野です。毛玉を気にするきれいめの服や、摩擦の多い着方をする場面では、糸の作り方まで含めて選ぶと差が出ます。