麻(リネン)を知る
タグの「麻」は、実は2種類しか指していない
夏物のタグでよく見る「麻」という表示。この言葉が使えるのは、法律上は2種類の植物だけです。
消費者庁の指定用語表を見ると、植物繊維の欄に並んでいるのは綿と麻で、麻の下にあるのは亜麻と苧麻の二つだけです。亜麻には「麻」「亜麻」「リネン」、苧麻には「麻」「苧麻」「ラミー」という指定用語が割り当てられています。それ以外の植物繊維は、「植物繊維」という用語にその繊維の名称や商標を括弧で付記する形で表示することになっています。
つまり「麻」と書かれていればリネンかラミーのどちらかで、それ以外の植物由来の繊維は、たとえ日常会話で麻と呼ばれていても、タグの上では「麻」と名乗れません。買うときにこの区別を知っていると、表示の読み方が一段細かくなります。
シャリ感と吸湿性は、同じ性質から来ている
東京都クリーニング生活衛生同業組合がまとめた繊維の一覧では、麻の特徴は「手触りは硬く、吸湿性がありサラっとしてべとつかないが、弾力性に乏しく、シワになりやすい」と説明されています。短いですが、麻という素材のほぼ全体がここに入っています。
手触りが硬いというのは、裏を返せば生地が肌にべったり張りつかないということです。夏に麻のシャツが涼しく感じられるのは、吸湿性の高さだけでなく、この張りのおかげで肌と生地のあいだに空気の層ができるからでもあります。同じ一覧では、綿の特徴が「吸湿性、通気性がよく、耐洗濯性もよいが、シワになりやすく、縮みやすい」とされていて、綿と麻はよく似た系統の繊維でありながら、手触りのところで性格が分かれることが分かります。
麻の公定水分率は綿より高く、天然繊維のなかでも吸湿性が高い部類に入ります。この値は、このページの物性データ表に出典つきで載せています。
シワは欠点であり、同時に味でもある
弾力性に乏しいということは、一度ついた折り目が戻りにくいということです。麻のシャツやワンピースを着ると、座っただけで膝のあたりにシワが寄ります。これは素材の性質そのものなので、加工である程度抑えることはできても、性質としてなくなるわけではありません。
このシワを「風合い」として受け取るか、「だらしない」と受け取るかは着る場面によります。きちんと感が求められるオフィスの服では扱いにくく、リラックスした夏の装いではむしろ持ち味になります。素材の向き不向きが、性能ではなく場面で決まる典型的な例です。
静電気の面では、扱いやすい側
麻は帯電列の中央付近に置かれる素材です。帯電列の上で離れた素材どうしがこすれるほど静電気は起きやすい傾向があるので、中央にいる素材どうしを重ねるかぎり、極端に離れた組み合わせにはなりません。
もっとも、麻を着るのは主に夏で、静電気が問題になりやすいのは空気が乾く冬です。実際に麻の静電気を気にする場面はあまり多くありません。判定の上では「起きにくい側の素材」として扱われます。
お手入れで気をつけたいこと
同じ一覧のとおり、麻はシワになりやすく、綿と同じく縮みやすい面もあります。洗濯機の強い水流でもんでしまうと、シワが深く入ったり生地が硬くなったりすることがあります。ネットに入れる、脱水を短くする、干すときに手で伸ばして形を整える——といった一般的な扱い方は、いずれも「もまない」という一点に向かっています。
洗濯表示は製品ごとに違います。麻100%なのか、綿やレーヨンとの混紡なのかで適した扱いも変わるので、まずタグを確認してください。
向いている服・気をつけたい場面
夏のシャツ、ワンピース、パンツのように、吸湿性と張りが効く用途が得意分野です。シワを避けたい場面や、肌に硬さを感じる人が直接肌に着る用途では、混紡の製品を選ぶという手もあります。重ね着の組み合わせがどうなるかは、チェッカーで確かめられます。