キュプラを知る
名前の由来は、銅
キュプラという聞き慣れない名前には、はっきりした由来があります。日本化学繊維協会の解説によれば、キュプラは原料を銅アンモニア溶液に溶かし、湿式紡糸によって繊維化したもので、別名を銅アンモニア法レーヨンといいます。キュプラは「銅(原子記号Cu)」を意味し、名前は製造方法から来ています。
同じ再生繊維でも、レーヨンがパルプを原料にするのに対し、キュプラは綿花の種子のまわりにある短い繊維(コットン・リンター)を主原料にしています。糸として紡ぐには短すぎて使いにくい部分を、溶かして繊維に作り直す——という成り立ちです。
だから、原料は綿だけれど化学繊維
東京都クリーニング生活衛生同業組合は、この点を「キュプラの原料である綿は天然繊維だが、キュプラ自体は人工的に作られた化学繊維であり、天然繊維の肌や環境へのやさしさと機能的な化学繊維のハイブリッドとも言える」と表現しています。原料の出どころと、繊維の分類が一致しない例です。
同組合によれば、キュプラの断面は円形で表面も滑らかなので、美しい光沢が生まれます。同協会も、キュプラは非常に細い糸ができ、絹に似た光沢があり、染色性に優れて鮮やかに染まると説明しています。
裏地に選ばれるのには理由がある
コートやスーツを着るときの、あのつるつるした裏地。同組合は、ほとんどの裏地で使われているのがキュプラだとしています(製品によってはポリエステルや絹が使われることもあります)。
なぜ裏地にキュプラが多いのか。同組合が挙げるのは、つるつるとした滑らかな肌触りに加えて、吸湿性・保湿性を持ち合わせていること、強度も高いこと、そして静電気が起きにくいという特徴です。似た特徴を持つ素材は他にもあるものの、高級感を保ちつつ実用性を総合的に見るとキュプラがもっとも適した素材になる、という説明です。
裏地はいちばん体に近く、スカートやコートの内側で脚や服とこすれ続ける場所です。そこに静電気が起きにくい素材を置くというのは、まとわりつきを避けるうえで理にかなった選択だと分かります。裏地がポリエステルかキュプラかで着心地の傾向が変わる、というのはこういう話です。
静電気の面では、中央付近
キュプラは帯電列の一次資料に個別の記載が見当たらない素材です。本サイトでは、同じ再生セルロース系で公定水分率も同じ値のレーヨンに準じた傾向値として扱っています。試験値ではなく、同じ区分の素材に準じた整理であることを、物性データ表にも明記しています。
その位置は帯電列の中央付近です。プラス側の端にあるウールやナイロン、マイナス側の端にあるポリエステルやアクリルのどちらと重ねても、極端に離れた組み合わせにはなりにくい——というのが、裏地に向く理由の裏づけになっています。
弱点は摩擦
同組合が挙げるキュプラの長所は、吸湿性・放湿性があって着用によるべとつきがないこと、高雅な光沢があること、やわらかくしなやかでドレープ性に富むこと、染色性がよいことです。短所は、摩擦により毛羽立ちが目立ちやすい(白化)という一点です。
取扱いの注意としては、薄手の生地が多いので洗濯時の強い摩擦や硬く絞ることを避けるよう書かれています。同組合はキュプラをレーヨンと似た特徴を持つ素材とし、基本的には家庭での洗濯はできず、できたとしても手洗い表示が付いていることが多いとしています。手洗いの場合もお湯は禁物で、生地を傷めたり縮んだりする原因になると注意されています。
タグでの書かれ方
消費者庁の指定用語表では、再生繊維のうち銅アンモニア繊維の指定用語が「キュプラ」です。なお同表には、2023年(令和5年)1月20日付でキュプラおよびリヨセルの繊維鑑別・混用率試験方法に関するJISが制定されたという注記も付いています。組成表示の裏側では、こうした試験方法の整備が続いています。
向いている服・気をつけたい場面
裏地、インナー、薄手のブラウスのように、滑りとなめらかさが効く用途が得意分野です。強い摩擦がかかる着方や、家庭で頻繁に洗う前提の服には向きません。重ね着の組み合わせは、チェッカーで確かめられます。